155 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:24 ID:avz0.aEE

同胞が捕捉された後、仁太はみるみる元氣を失つてゐた。
其の理由が、此の國に対する怒りなのか、友を喪つた哀しみなのか、
獨立への途の遠さなのか、其れとも椎子さんへの想ひなのかは、
仁太にも判らなかつた。

茂名男は仁太を氣遣ひ、逍遥へ連れ出してみたが、仁太は一向に
何も語ろうとはしなかつた。
                    彡 ゞ ゞ彳彡彳彡彡彳ゝゞ彡 ゞゝ
                     ミ彳彡彳彡彡彳彳彳彡彡彡ミゝ
                    彡彳彡ゝ\\ゞゝ彡彳彡ミミ彡ゝ彡
                   彡ヽ彡彡彳ヽ\彡彡 彳ミヽ彡彡ミゝ
 (先刻から、           彡ミ彡ヾ     {::::::::;;;;{   彡彳 ゞ
  何も喋らない……)                }:::::::;;;;;}
        Λ_Λ   Λ_Λ          {::::::;;;;;;}
       (    )  <    >         {::::::;;;;;;;}
       <     > ∠ ________ ゝ         {:::::;;;;;;;;}
       ("""""◎* (    )         }:::::;;;;;;;}
     ━┳━━━━━━━━┳━       }:::;;;;;;;;;;}
       ┃                ┃        {:::;;;;;;;;;;}
 w从wWw从从wjwhw从wwj从w从ww从从www/;;;/;;;;;;;;;;ヾw从

156 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:26 ID:avz0.aEE

仁太が何故元気を無くしたのかが判らない茂名男は、
斯う考えた。

      Λ_Λ
     (´∀` ) ゜ 。   (   ……ハハア、此れは屹度
     <  y ____ >    ○(   「恋煩ひ」に違ひない。
  _/⌒ ⌒ ノ___  (   好きな女子の事を考えてばかり
   (_(__) |_|     (   ゐるんだらう。

157 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:26 ID:avz0.aEE

      Λ_Λ
 ポン  (´∀` ) ゜ 。  (   さうだ、恋煩ひなら、
 \从∠ y ____ >    ○(   擬古先生に相談するのが
  _/⌒ ⌒ ノ___  (   一番だ
   (_(__) |_|     (  仁太を先生の処へ遣ろう

158 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:27 ID:avz0.aEE

      ?
     Λ_Λ    Λ_Λ
    <ヽ`∀´>   (´∀` )
   <  y___ ゝ  <  y ____ >
  _/⌒ ⌒ ノ__/⌒ ⌒ ノ___
  <_<__〉  (_(__) |_|


 (´∀` )  仁太、君は今、悩んでゐるね

 <ヽ`∀´>  ?

 (´∀` )  其れなら、擬古先生に一度相談してみると好い
         君の新聞社に小説を連載してゐる小説家だ

 <ヽ`∀´>  擬古……あア、「逝國」の先生だね

 (´∀` )  紹介状を書いて遣るから、会いに行き給へ
         屹度、君も元気になるだらう

159 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:28 ID:avz0.aEE

其の後日、擬古の家にて

              それにしても
         Λ Λ 最近出番が
         (゚Д゚ )  少ないぞゴルァ
        < |=| > ┳━━━┳
        ( |つ ) ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

160 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:29 ID:avz0.aEE

   /ノ人ヽ   Λ Λ
   (*゚д゚)   (゚Д゚ ) ?
   (  v フ[] c「 y  > ┳━━━┳
   (__ )   ( |つ ) ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  (*゚д゚) 茂名男さんの紹介状を持つた男の人が来ましたよ

  (゚Д゚ )  ナニ、茂名男の?

  (*゚д゚) 今玄関で待つて頂いて居ますけど、如何しますか

  (゚Д゚ ) 一寸、紹介状を見せてご覧
       ……フム、上がつて貰いなさい

161 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:30 ID:avz0.aEE

/ どうぞ                恋煩ひの
   此方へ          Λ Λ 相談か……
\                (゚Д゚ )  久しぶりだな
                < |=| > ┳━━━┳
                ( |つ ) ┃      ┃
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

162 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:31 ID:avz0.aEE

擬古の家に来た時、仁太は、半信半疑だつた。
と言ふより寧ろ、まるきり擬古と云ふ人物を信じていなかつた、
と言ふ方が正しいやもしれぬ。


   Λ_Λ           Λ Λ
  <ヽ`∀´>          (゚Д゚ )
 <_____y__ ゝ         < y  >  ┳━━━┳
 ∠/___)          ( |つ )   ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 <ヽ`∀´> (チョパーリの作家先生に何が判るニダ・・・・・・)

  (゚Д゚ )  いらつしやい、君が仁太君か
        まア、御茶でも飲んでゆつくりして行き給へ

 <ヽ`∀´> ハイ……

163 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:33 ID:avz0.aEE

さうして、仁太が、御茶を飲まうとした時、擬古はいきなり
斯う切り出した。


   Λ_Λ           Λ Λ
  <ヽ`∀´>          (゚Д゚ )
. <_____y__ ゝ ζ    ζ  < y  >   ┳━━━┳
 ∠/___)  旦     旦  ( |つ )   ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  (゚Д゚ )  君、悩みや惑ひは、何処から来ると思ふかね

 <ヽ`∀´> ? ……分かりません

  (゚Д゚ )  私はね……此等は「愛」から来ると思ふのだよ

 <ヽ`∀´> 愛……?
        愛とは、「愛する」の愛でせうか

164 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:34 ID:avz0.aEE

  Λ Λ     然様、其の「愛」だよ。
  (゚Д゚ )     金を愛する者は金策に悩み、
 <  y  >    力を愛する者は政争に惑ふ。
 ( |つ )    國を愛する者は運動に惑ひ、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   女を愛する者は恋路に悩む。

          愛すれば悩まねば居られず、惑はねば居られぬ。
          人とは然様な愚かな生き物やもしれぬな。

165 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:35 ID:avz0.aEE

其処まで擬古が云つた時、仁太は卒然語り出した。
仁太の脳裡には、志半ばにして捕捉された同胞の顔が
浮かんでは消えていた。

           愚かな……でせうか?
   Λ_Λ    先生、先生はさうして文筆で生計を立て、
  <#`Д´>   遠巻きに世間を眺むるゆゑ、
 <_____y__ ゝ   國を愛し、惑ふ人間を愚かと仰有るのでせう。
 ∠/___)    真に國を愛し、身を投げ出した人間は、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  何故愚かと笑はれねばならぬのでせうか?
           先生、お教へ下さい。

166 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:36 ID:avz0.aEE

さうしてそのまゝ仁太は、今迄、自らの内に秘め続けてゐた物を、
擬古の前に吐き出し始めた。
祖國への思ひ、同胞の志……

総てが、今迄誰にも話したことの無かつた彼の秘密であつた。
「何故、自分が内なる思ひを擬古に語つてゐるのか?」
其れは、仁太には分からなかつた。


   Λ_Λ /         Λ Λ (こ、恋煩ひの相談では
  <ヽ`Д´>          (゚Д゚;)  無いのか?)
. <_____y__ ゝ\ζ   ζ  < y  >   ┳━━━┳
 ∠/___)  旦    旦   ( |つ )   ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

167 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:37 ID:avz0.aEE

仁太が其の総てを語り終えた時、
陽は既に傾いてゐた。


   Λ_Λ           Λ Λ
  <ヽ`∀´>          (゚Д゚ )
 <_____y__ ゝ         < y  >  ┳━━━┳
 ∠/___)  旦    旦   ( |つ )   ┃      ┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

  (゚Д゚ )  さうか……君は、此の國を憎んで居るのかね

 <ヽ`∀´> 其れは……自分でも判りません

  (゚Д゚ )  仁太君、君に好いものを御馳走しやう
        一寸其処まで行かないかね

168 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:38 ID:avz0.aEE

両人が訪れたのは、淡路町に在る「松榮亭」と言ふ店であつた。
擬古は其処でオムライスを注文した。
さうして仁太に斯う云つた。

            Λ Λ
            (゚Д゚ )
     Λ_Λ__「__y__>___
    <    >   (○ )   /
  ∠ ┳┳┳┳ゝ      /||
     ┃┃┃┃ ̄ ̄ ̄|| ̄  ||
     ╋┻┻╋      ||
     ┃    ┃      ||


  (゚Д゚ )  此のオムライスを見給へ

 <ヽ`∀´> ?

  (゚Д゚ )  此の中の米は、此の國の姿、其のものだよ
        西洋からの技術を借り入れ、専心にめかし込んで
        西洋の為りをしてゐる

 <ヽ`∀´> 成程……

169 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:40 ID:avz0.aEE

  「其の為に、此の國は随分と無茶をしてゐる。
   露西亜との戦争もさうであつたし、今の半島統治も
   さうだ……さうして、國内では無理がたたつて財政が
   火の車だ。西洋に為らう為らうとして、漱石の言ふ如く、
   牛に対する蛙のように膨らみきつてしまつた。

   ……どんなに西洋に似せても、何れ此の様に
   喰はれてしまうかも知れないがね。」

               オムライスを注文する
                ↓
               熱々を食べる
            Λ Λ↓
            (゚д゚ )ウマー
     Λ_Λ__<_]つ_>___
    <    >   (○ )   /
  ∠ ┳┳┳┳ゝ      /||
     ┃┃┃┃ ̄ ̄ ̄|| ̄  ||
     ╋┻┻╋      ||
     ┃    ┃      ||

170 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:41 ID:avz0.aEE

  「君は若い、万事に真摯に取り組んで仕舞ひ度く為る
   のも止むを得まい……併し、無理は何れ破綻するよ。
   其れまではマタアリと、美味いオムライスを食べつゝ、
   待つてみるのも、善いのかも知れない。
   兎に角……命を単簡に捨てるような真似はいけないよ。」

            Λ Λ
            (゚Д゚ )
     Λ_Λ__「__y__>___
    <    >   (○ )   /
  ∠ ┳┳┳┳ゝ      /||
     ┃┃┃┃ ̄ ̄ ̄|| ̄  ||
     ╋┻┻╋      ||
     ┃    ┃      ||

……仁太は、何時の間にか擬古の論舌に聞き入つている
自分に驚いた。
さうして擬古の、「命は単簡に捨ててはいけない」と言ふ言葉を、
脳裡で繰り返していた。

171 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:43 ID:avz0.aEE

擬古と別れた帰り途、仁太は不図、自分の肩が軽くなつた
やうな感覚を覚へた。
「明日でなくとも善い、何時の日か、祖國の獨立を達成する……
 其れで善いのだ」
さう思うようになつた。

さうして、
「今度は先生に、恋煩ひの相談に行かうか……」
と、考へてゐた。

                  (
            。     (   ΛΛ
     Λ_Λ  ゜  〇  (   (゚ー゚*)
    <*゜ー゜>ポワーン  (     UU |
   <   y ゝ      (    □_ヽ
     |=====|         (   UU
    〈_フ__フ         (


 〜 マタアリ /\ 〜

172 名前:( °Д°) 投稿日:01/09/04 06:44 ID:avz0.aEE

<155-171>
長編にて失礼致し候。

此の擦れの何処かに、オムライスの御話が有りましたのを
元に、一寸した御話をお送り致し候。

オムライスにはあらねど、
「諸兄の御口に合ひませば……。」

     Λ Λ
     (゚Д゚ )
    <φ y >
  ┳┯┯┯┯┯┳
  ┃│││││┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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