104 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:26 ID:E60lpd7o

「同胞、捕捉さる―――」
仁太は、其の報を聞いて、其の場に頽れさうに爲る自分を必死に
押し止め、其の動揺を、決して茂名男には悟られまいと努めた。
其れは、獨立運動が其の一切を秘密としてゐた爲である。

       Λ_Λ      Λ_Λ
      <ヽ`∀´>     (´∀`; )  オロオロ
     <   y ゝ   ⊂「 ⊂「 >
       |=====|      |"""""◎*
      〈_フ__フ     .(_(__)


  (´∀`; ) ど、どうしたんだい、大丈夫かね

  <ヽ`∀´> あ、あア何でもない、眼に塵が入つてね

  (´∀`; ) ……

105 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:27 ID:E60lpd7o

併し仁太は、暗澹たる思ひに爲らざるを得なかつた。

其の後日、仁太の許に、手紙が届いた。



         Λ_Λ
         <ヽ`∀´> 誰からニダ・・・・・・
         <  y| ̄|ヽ
 ━━━┳  |====|_⊂
       ┃  〈_フ__フ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

106 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:28 ID:E60lpd7o

其れは、拘置所から届いた同胞からの便りであつた。


 〜李 仁太 殿
  此の度は、斯様な仕儀に為り、面目之無く候。
  幸ひ、今の所取調は緩やかなれば、我々は無事也。
  安心され度候。
  ……
                       Λ__Λ
                      /◎=◎ \
         Λ_Λ         \  ∀   /
        < `д´ >
      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       ⊃       ⊂
      |______|
        〈__〉_〉

107 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:29 ID:E60lpd7o

  ……我々は、運動について、何一つ語つては居らぬ。
  勿論、君の事も何も語つておらぬ。
  君には官憲の手は伸びる間敷事、安心され度候。
  ……
  ……君は未だ若い。學も有る。
  君には將來が有る。
  我々の運動は失敗に終つてしまつたが、君の力で、
  何時の日か、祖國の獨立が達せらるゝ事を、
  我々は祈つてゐる。
  ……

       。 ゚ 。  ゜
     三  Λ_Λ ゚
     三 <ヽ`д´>
    三  <  y  フ⊃
     三 /=====|
       「_> __フ

108 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:30 ID:E60lpd7o

  ……獨立青年會議の机の裏に、此れまで溜めてきた
  運動資金を遺して置いた。
  此れは、君の好きなやうに使つて構はない。
  少額では在るが、我々から君への、餞別である。
  ……
                 _
                 /||
      _____/.. ||
      |         |.   ||
      |   Λ_Λ|  . || ガチヤリ
      |  < ;`д´>.....C||
      | <   y   ]っ ||
      |   |=====|| .. . ||
      |  〈_フ__フ   ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

109 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:32 ID:E60lpd7o

  ……そろ/\復た、取調の時間だ。
  行かねば為らない。
  此処らで筆を置くことにする。
  ……
  ……我等が祖國に、獨立の万歳を唱ふ日の来るを信じて
                   大正三年八月三拾日

                   |
                   |
                   六
                  ( w )
     Λ_Λ           ̄
    <ヽ`д´> ・・・・・・
   <   y ゝ        ガランドウ
     |=====|
    〈_フ__フ
    _______________
    |\                    \
    \ \                     \
      \ \                     \
        \ \                     \

110 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:33 ID:E60lpd7o

_______________
_______________|
                  ||
.         Λ_Λ      ||
        <ヽ`∀´>未だ在つたニダ・・・・・・
       < .___y.[]⊂ゝ   ||
       ∠/ __).     ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

111 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:35 ID:E60lpd7o

其の封筒には、二百二十円が入つていた。
仁太は、其の封筒の重さをずしりと感じた。
さうして、其の封筒を胸に抱くと、此処で過ごした、
二度と帰らぬ日々が瞼に蘇つて来た。

   Λ_Λ  /            仁太君   \   Λ_Λ
  < ◎∀◎>    ……否、諸君! 君は優れた   <◎∀◎ >
  <  y  フ \            人間だよ  / <  y   ゝ
   |=====|                       Λ_Λ=====|
  〈_フ__フ      Λ_Λ          ∩<∴`∀´>∩マンセー!
             <ヽ`∀´> 李 仁太です < ___y___ フ ウリナラマンセー!
            <   y ゝ よろしく      |    |
              |=====|            〈__〉_〉
 我々は真に \   〈Λ_Λフ
  祖國の礎と    <◎Д◎ >     Λ_Λ  仁太君
   ならむ! / С[  y  ゝ   <`∀´∴> 新聞社の僕の友人が
              |=====|    c「 _y_____ ゝ 校正掛を探してゐるんだが
  仁太君、      <__<_〉     |   |             ノ ̄ ̄ ̄
\ 其の考えは誤つている      <__<_〉       ノ ̄ ̄ ̄
   ̄ ̄\                          ノ ̄ ̄
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\          ノ ̄ ̄ ̄ ̄
               ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄
                 〇
                。
            Λ_Λ
           <ヽ;Д;>
          < ___y___ ゝ
          ∠/__)

112 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:37 ID:E60lpd7o

其の半年程後、新聞の片隅に、朝鮮獨立運動家の死を傳へる記事が載つた。
死因は、獄中での病死と発表されてゐた。

仁太は遺された二百二十円で二人の亡骸を受け取り、
谷中に二人の墓を設けた。
其の墓の場所は、仁太の外に知る者は居ない。

           /
          ノ   ノ
           i    /
           |   ノ
           |    i
       __|__|___
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     |\〜⌒⌒⌒⌒⌒〜/|
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     |                  |
     \________/
      \______/

113 名前:( °Д°) 投稿日:01/08/30 06:38 ID:E60lpd7o

<104-112>
長篇にて失礼致し候。

日韓併合間も無い此の頃、朝鮮半島にては西大門監獄と言ふ
大きな監獄に、数多くの獨立運動家が収容されてゐたさうです。
其処で獄死せる運動家も、数多に及ぶと聞き候。

今回は、さうした運動家の悲劇を基に御贈り致し候。
斯様にして死せる運動家は、果たして帝都に在りや無しや。

     Λ Λ
     (゚Д゚ )
    <φ y >
  ┳┯┯┯┯┯┳
  ┃│││││┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

119 名前:( ´∀`)さん 投稿日:01/08/30 17:01 ID:ISOVovmc
水を差して申し譯有りませんが、
獄中からの手紙は檢閲を通つたのでせうか?

∧∧
( ゚Д゚)∧
∩ヽ/||⌒!つ 

121 名前:( ´∀`)さん 投稿日:01/08/30 17:50 ID:8FRW5V1U
検閲はおろか、
手紙を出す事すら叶わなかつたのではないかと...
官憲に捕まつた時に備へ、
予め別の同志に仁太への手紙を託していたと愚考いたします。

  ∧ ∧
  ( ゚Д゚)
  < ヽ⊂>
 〜(_|⊃)

 
 
140 名前:山犬。 投稿日:01/09/03 16:49 ID:D66E6zM6
>121
<104-112>の作品,昨今稀に見る良作と感じ入り候。
只,惜しむらくは121の説では眞に「りあるてぇ」に欠けると思うに到り。
官憲に捕縛される際への用意なれば
 「今の所取調は緩やかなれば」
 「君の事も何も語つておらぬ」
 「そろ/\復た、取調の時間だ」
の箇所に於いて,甚だ辻褄の合わぬ事情に相成らぬ。

作品があまりに胸に来る良作ゆえ,あえて苦言を陳べたこと,
叉,新しき説を望むこと,御理解して頂けたらこれ幸い也。

     Λ Λ
     (゚Д゚ ) ムズカシイナ……。
    <φ y >
  ┳┯┯┯┯┯┳
  ┃│││││┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

141 名前:( ´∀`)さん 投稿日:01/09/03 19:57 ID:aiIyg2JI
>140

小生も、121殿の御高説に對して當初は然う考へ申した。
されど、此れは仁太君の同志が逮捕前に身邊に危急を感ぜられ、最早捕縛は逃れられず
生きては戻れぬものと心中に期する処ありて、彼の罪悪感を減ずるために事前に画策された
書面に非ずや。

己が身を責めず、等しく頒かちあへる理想を成し遂ぐべし−−小生率爾乍ら斯様に心得申した。
諸賢の御判断や如何に。


∧∧
( ゚Д゚)∧
∩ヽ/||⌒!つ

 
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