735 名前:( ´∀`)さん 投稿日:03/04/08 18:18 ID:Rknar9PC
七、北十字とプリオシン海岸(後半)
(壱/伍)
そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に来ました。
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、
夢のように云っているのでした。
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
「そうだ。」                   | .|  この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。 |
どこでぼくは、そんなこと習ったろう.    |└───────────────────────┘
,,,────────────────┘
ジョバンニは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、
水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、
水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、
うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。


 
736 名前:( ´∀`)さん 投稿日:03/04/08 18:20 ID:Rknar9PC
(弐/伍)
川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖の下に、白い岩が、まるで運動場のように平らに川に沿って
出ているのでした。そこに小さな五六人の人かげが、何か掘り出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈んだり、
時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。
「行ってみよう。」二人は、まるで一度に叫んで、そっちの方へ走りました。
その白い岩になった処の入口に、〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物のつるつるした標札が立って、向うの渚には、
ところどころ、細い鉄の欄干も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。

  ;⌒ヽ,,         /◎∧       ∧◎∧       ..
 ./   ヾへ       (,,゚Д゚)       (´∀` )       ._______.
〆   ヘ  ヽ      (/とノヽ   _/~~ヽ_|__ )       |プリオシン海岸。|
         〜 ⌒|-‐、/ 〉  )〜\ ̄ ,/| |   |       |         .0 |
             ヾ_/  (./^\)   ○´ (__(__)      ‖ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.‖
   /⌒へ,,,ゞ Λ_Λ          ∧∧            
         ( ・∀・)  〆⌒⌒ヾ (゚Д゚,,)
         ( <▽>つ/      (つO⊂ヽ
         | l: |  へヘ,,,  とλ,,J  ⌒へ,,
         (__)_)  ∧_∧
               ( @д@) ,,へ
               ( <V> )   ⌒ヘヾ
               人 γヽゝ                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               (__人_ノ                 ∧∧<おや、変なものがあるよ。
                               ∧∧ ミ゚Д゚,,彡\___________
                               (  ,,) ミ●⊂ヽ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                             〜/  |  と,,(⌒)ミ〜<大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。
                              ( ⌒)っ        \________________
              _____________∧______________________
                 くるみの実だよ。そら、沢山ある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。
              __∧____________________
               早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。


 
737 名前:( ´∀`)さん 投稿日:03/04/08 18:21 ID:Rknar9PC
(参/伍)
二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。
左手の渚には、波がやさしい稲妻のように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻でこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。
 だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、
手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴をふりあげたり、スコープをつかったりしている、
三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていました。
見ると、その白い柔らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣の骨が、横に倒れて潰れたという風になって、
半分以上掘り出されていました。そして気をつけて見ると、そこらには、蹄の二つある足跡のついた岩が、四角に十ばかり、
きれいに切り取られて番号がつけられてありました。

  ;⌒ヽ,,         /◎∧       ∧◎∧       ..
 ./   ヾへ       (゚Д゚,,)       (´∀` )       ._______.
〆   ヘ  ヽ      (/とノヽ   _/~~ヽ_|__ )       |プリオシン海岸。|
         〜 ⌒|-‐、/ 〉  )〜\ ̄ ,/| |   |       |         .0 |
             ヾ_/  (./^\)   ○´ (__(__)      ‖ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.‖
   /⌒へ,,,ゞ Λ_Λ          ∧∧            
         ( ´д`)  〆⌒⌒ヾ (゚Д゚;)
         ( <▽>つ/      (つO⊂ヽ
         | l: |  へヘ,,,  とλ,,J  ⌒へ,,
         (__)_)  ∧_∧       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               (  @д) ,,へ  <そこのその突起を壊さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。
             □⊂ <V> )   ⌒ヘヾ\おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。
               人 γヽゝ         \________________________________
               (__人_ノ                 ∧∧
           君たちは参観かね。        ∧∧ ミ゚Д゚,,彡
                               (  ,,) ミ●⊂ヽ   
                             〜/  |  と,,(⌒)ミ〜
                              ( ⌒)っ        


 
738 名前:( ´∀`)さん 投稿日:03/04/08 18:22 ID:Rknar9PC
(四/伍)
                             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ∧_∧       /くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新らしい方さ。
              □( @д@) ,,へ  <ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いま川の流れているとこに、
               ∩ <V> )   ⌒ヘヾ\ そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。このけものかね、これはボスといってね
               人 γヽゝ         \________________________________
               (__人_ノ                 ∧∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                               ∧∧ ミД゚ ,,彡<標本にするんですか。
                               (  ,,) ミ●⊂ヽ  \________
                             〜/  |  と,,(⌒)ミ〜
                              ( ⌒)っ        
     ───────────∧────────────────────────────────
     いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという
     証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、
     あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。
     わかったかい。けれども、おいおい。そこもスコープではいけない。そのすぐ下に肋骨が埋もれてる筈じゃないか。


 
739 名前:( ´∀`)さん 投稿日:03/04/08 18:22 ID:Rknar9PC
(伍/伍)
                            
                 ∧_∧        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
              □( @д@) ,,へ  <そうですか。いや、さよなら。
               ∩ <V> )   ⌒ヘヾ\__________
               人 γヽゝ        
               (__人_ノ                 ∧∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                               ∧∧ ミД゚ ,,彡<もう時間だよ。行こう。
                               (  ,,) ミ●⊂ヽ  \________
                             〜/  |  と,,(⌒)ミ〜 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                              ( ⌒)っ      <ああ、ではわたくしどもは失礼いたします。

                   ∧∧            
               ≡  (,, ゚Д)            ∧,,∧
              ≡  ⊂/ つ/         ≡  ミ,, ゚Дミ
                  ( '⌒)           ⊂/ つ/
            ≡   (/'し''         ≡   ( '⌒)
                          ≡    (/'し''

二人は、その白い岩の上を、一生けん命汽車におくれないように走りました。
そしてほんとうに、風のように走れたのです。息も切れず膝もあつくなりませんでした。


 
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