928 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:33 ID:Bh/fSono
引っ越してから、擬古が段々痩せてきた。

         
     ∧ ∧  
 ___( °Д°)
(_____ノ
 UU  UU

 
929 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:34 ID:Bh/fSono
一向に子供と遊ぶ気色がない。日が当ると縁側に寝ている。


   | |      
   | |  年寄りになつたもんだ    
   | |  ∧∧ 
   | |  ( ゚Д゚)        ∧ ∧  
   | | (ぅu y ゝ  ___( °Д°)
   | | (_!つ__) (_____⊃ ⊃    
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 
930 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:34 ID:Bh/fSono
しかしその寝方に何処となくゆとりがない。
ものうさの度をある所まで通り越して、動かなければ寂しいが、
動くとなお寂しいので、我慢して、じっと辛抱しているように見えた。


   | |      
   | |    …。    
   | |  ∧∧ 
   | |  ( ゚Д゚)        ∧ ∧  
   | | (ぅu y ゝ  ___( °Д°)
   | | (_!つ__) (_____⊃ ⊃    
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 
931 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:35 ID:Bh/fSono
それでも時々は用があると見えて、外へ出ていくことがある。
するといつでも近所のフサから追い掛けられる。



           ゴルァ            ゚ヽ ∧ ∧  
       ,,,,,,,,,,,,,,,∧,,∧          _゚丶(;°Д°)
     〜′,,,,,,,,,,ミ,,゚Д゚彡   = 三 (_____ノ
      UU"""" U U          (ノU  (ノU

 
932 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:35 ID:Bh/fSono
これが度重なるにつれて、擬古の毛が段々抜けて来た。
始めは所々がぽくぽく穴のように落ち込んで見えたが、
後には赤肌に抜け広がって、見るも気の毒なほどだった。


   | |      
   | |    大丈夫か?    
   | |  ∧∧        ペロペロ
   | |  ( ゚Д゚)       ∧ ∧  
   | | (ぅ  y ゝ  __(°Д° )
   | | (_!つ__) (__;;:;:_⊃ ⊃    
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 
933 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:37 ID:Bh/fSono
彼は万事に疲れ果てた体を圧し曲げて、
しきりに痛い部分を舐め出した。

失敗しますた。932の下の段の台詞

 
934 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:38 ID:Bh/fSono
おい擬古がだうかしたやうだな
___  _________/
     ∨          ||
    ∧ ∧   /ノ人ヽ ||
    ( ゚Д゚)   (゚ー゚*) ||о__
    < |=| >━┳(/  | ||###
    ( /つ)  ||(  )⊃||###
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_______∧___________
                           \
さうですね、やつぱり年を取つたせいでせう


妻は至極冷淡である。

 
935 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:38 ID:Bh/fSono
しばらくしてから、今度は三度の物を時々吐くようになった。
苦しそうだけれども、やむを得ないから、
気が附くと表ヘ追い出す。


⌒~⌒ ‖~⌒⌒‖⌒・⌒‖⌒~⌒‖⌒"⌒
===x===x===x===x===
 ∵  ‖ ∴ .‖ ∴ ‖ ∵ ,‖" ∴
===x===x===x===x===
    ‖  ,, ‖  .. ‖   , ‖
゙゙′゙″゙′゙゙゙゙ ゙゙′゙゙゙゙ ′゙゙ "゙″゙゙゙゙  "" ~~
      Λ Λ          ∧ ∧   イテーヨシ…ウエッ
     ( ゚Д゚)     ___( °Д°)
     < |=|  >  (__;;:;:_ノ    ヾ 
       |````|    UU  UU     ∈∋ 
       ∪∪    

 
936 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:39 ID:Bh/fSono
擬古は吐気がなくなりさえすれば、依然として大人しく寝ている。
この頃では、じっと身をすくめるようにして、
いかにも切り詰めたうずくまり方をする。


   | |      
   | |     こいつ…   
   | |  ∧∧ 
   | |  ( ゚Д゚)        ∧ ∧  
   | | (つ  y ゝ  ___( °Д°)
   | | (_!つ__) (__;:;:;;_⊃ ⊃    
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


目つきも少し変わってきた。
始めは悄然たるうちに何処か落ち着きがあったが、
それが次第に怪しく動いてきた。
けれども放っておいた。

 
937 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:39 ID:Bh/fSono
ある晩、彼は自分の取った魚を取り上げられるときに出すような
唸り声を上げた。


                  
        .|| !  おい、だうした      
  .___O||  ∧ ∧          イテェヨシイイィィィィ――
  井 井 井 ||  ( ゚Д゚)            ∧ ∧ 
   井 井 井||  ノ ヽ/□|]     ___(;°Д°)
  井 井 井 ||  ┳━━┳    (__;;;;;::_⊃ ⊃
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

この時変だなと気が附いたのは自分だけである。

 
938 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:40 ID:Bh/fSono
明くる日は机の横に座ったなり、一日唸っていた。

                  
        .||    まだ唸つとるな      イテヨシ
  .___O||  ∧ ∧              イテェヨシイィィィ
  井 井 井 ||  ( ゚Д゚)            ∧ ∧ 
   井 井 井||  ノ ヽ/□|]     ___( °Д°)
  井 井 井 ||  ┳━━┳    (__;;;;;::_⊃ ⊃
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

が、夜になると擬古のことは自分も妻もまるで忘れてしまった。

 
939 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:40 ID:Bh/fSono
擬古の死んだのは実にその晩である。


                ∧ ∧ 
           ___( - Д - )
          (__;:;:;;_⊃ ⊃


朝になって、妻が裏の物置に薪を出しに行った時は、
もう硬くなって、古い竃の前に倒れていた。

 
940 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:40 ID:Bh/fSono
妻は今までの冷淡に引きかえて急に騒ぎ出した。
四角な墓標を買ってきて、何か書いてやってくださいと言う。



           ───
          │ 擬 │
          │ 古 │
          │ の │
          │ 墓 │
          │    │
         ~~~~~~~~~~~~~


自分は表に擬古の墓と書いて、
裏に、この下に稲妻起こる宵あらんとしたためた。

 
941 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:41 ID:Bh/fSono
擬古の命日には、妻がきっと一切れの鮭と、
鰹節を掛けた一杯の飯を墓の前に供える。
今でも忘れたことがない。
ただこの頃では、庭まで持って出ずに、
大抵は茶の間の擬古の居た所へ置いておくようである。

                  
        .||      ……。            
  .___O||  ∧ ∧    
  井 井 井 ||  ( ゚Д゚)           
   井 井 井||  ノ ヽ/□|]        ,,,,, 
  井 井 井 ||  ┳━━┳       ヽノ ⊆⊇
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(終)

 
942 名前:( ´∀`)さん 投稿日:02/07/19 16:47 ID:Bh/fSono
漱石『永日小品』より『猫の墓』
勝手に殺してしまって申し訳ない
この作品好きだったもので

AA初挑戦作でした。お目汚しスマソ

 
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