- 330 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:43 ID:J9fo0Ea2
∧_∧ 恋愛は詩、ロマンチツクな詩、しかも決して非現実的な詩では
/Xハ)゛∂ ないのであります。恋愛にも種々あります、幼時の初恋、青年期
(`∀´*)ハJ 中年期の恋、その何れもが大部分自分の意識する処は、詩的感激、
(⊃φ|:|~~
) ロマンチツクな精神慾ではありますが、意識無意識にかゝはらず、
┳┯┯┯┯┯┳ その底には厳として、肉体的意慾が横はり、それが流露を
┃│││││┃ 遂げさせんとの自然の意志が実に緊密に加勢せられてあります。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゆゑに、恋愛に於いて当事者の意識する処は大部分ロマンチツクな詩的な
精神的部分でありながら、実は人類の根本義に深く根ざし最も確実な現実性を
有する最も現実的人生行路のところどころに置かれたる詩篇なのであります。
しかし斯う云ひ去り書き終つたならば、非常に簡単な
∧_∧
恋愛解釈をもつて尽きることになりますが、以上は根本の /Xハ)゛∂
概括を一粒子に搾縮した言論の具象に過ぎません。
(`∀´*)ハJ
この根本よりして幾多の複雑、異端、多種、多様の実例が ((
(⊃φ|:|~~ )
生ずるのであります。 ┳┯┯┯┯┯┳
┃│││││┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 331 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:44 ID:J9fo0Ea2
- ______
| 驛 橋 新 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄________
/ \
./ \
__ | |
|□ | | ∧_∧∩ )) |
|三||.| | ( ;Д・) ノ |
 ̄ ̄ | < y ゝ |
| _∩ _ /_∧_.ヽ .|
_____| || ̄||..(__)_) .|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ノ人ヽ 男と女の恋が成り立つてから半年程のちでした。
J(*ToT) 男が朝鮮へ行かなければならなくなりましたのは、
| UU 男女の哀別離苦の情、目もあてられぬほどのものでありました。
/___□ しかし、その悲哀にも男女おのづからの差はありました。
UU
- 332 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:44 ID:J9fo0Ea2
すまぬ…他に女が出来た…
/ノ人ヽ ∧_∧ 別れてくれ。
J(*ToT) (-∀-;; )
| UU < y ゝ
ノ
\ /___□ /_∧_.ヽ ノ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄\ UU (__)_) ノ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄\ ノ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄
ο 女が男の遠く去つたあとの寂寞、男が遠隔の地で
シクシク… 長の月日を過す間に、自分に対する恋の心がうすらいで、
_ /ノ人ヽ 他に心を移すやうな場合さへ想像しての純粋な慟哭で
|;;;;| J(*ToT) あるのにくらべて、
/メ; \ ( ヽ:/ヽつ___
|;; (◎);| ..ノ )))) || ||
|:::;□::;;| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 333 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:45 ID:J9fo0Ea2
オマチシテマシタ 事業が成功したぞ。
アナタ… やっと迎えに来れたぞ。
/ノ人ヽ 円_円 _____ノ
J(*゚ー゚) (・∀・ ) ノ
| UU $⊂ヽV/ ) ノ
男は、女の純粋な貞操にふかくたのむ処を持ち、
/___□ |_|_|
ノ ましてその朝鮮行は、男女周囲の圧迫による
\ UU (_)__) ノ 止むなき結果ではありましたが、男の事業慾の
\ ノ 発露の一端にその朝鮮行はふれて居たもので
 ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ありましたから悲哀のなかにも一縷の希望を持つて
〇 居た処に、男の悲哀は女に較べてその程度の
ο 差異はかなりあつたかもしれません。
この件の取引はどうであらうか。
。 ∧_∧ 御主人様、目下交渉中で候。
∧_∧ <`∀´;;(ヾ
( ・∀・) < ヽV/ y
∪ヽV/ ゝ | >< |
 ̄φ ∪  ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ ̄ ̄/ /
 ̄ ̄ ̄ /
- 334 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:46 ID:J9fo0Ea2
フタタビアイマショウネ…
/ノ人ヽ ∧_∧ 当然にて候!!
J(*TーT)(T∀T )
| UU < y ゝ しかしとにかく二人ははたで見る目も無惨な哀別離苦の
/___□ /_∧_ヽ かぎりをつくし、かたく再会を約して別れました。
UU (_)__)
∧_∧ 三年は経過しました。
/Xハ)゛∂ 男は無事、かなりな貯金と、事業の端緒を得て女を迎へに
(`∀´*)ハJ
日本の東京へ三年ぶりの対面の夜――その時間が来ました。
(⊃φ|:|~~ )
かへりました。諸氏は男が女の許へ帰るが否や、どんなにか
┳┯┯┯┯┯┳ 二人の間に劇的な、再会のよろこびが叙されたかを想像する
┃│││││┃ ことでせう。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
或る旅館の一室。
女が先へ行つて待つて居たのでした。
||###
_∬___ ∬
___ ||###
/ノ人ヽ / 旦 旦 /|| ||###
(,*,゚ー゚) / /
|| ||о__
| ヽ) || ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ||
||###
⊂( ). || .||
.||###
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 335 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:46 ID:J9fo0Ea2
男が這入つて来ました。
女は男の顔を見て、小声乍らあつと叫んで男の方へ立ちそびれました
男も女の顔を見て、あつと同時に同じやうに云ひました。そして女に近づかうと
したばかりで立ちどまりました。
\从/ .||
\从/ Ξ ||###
/ノ人ヽ _∬___ ∬
___ || ∧_∧ Ξ .||###
(,*,゚o゜) / 旦 旦 /||
|| (・ O・;; )Ξ.||###
(( ( ヽ) / / ||
|| (ヽV/ ⊃ .|о__
|~~~~ノ || ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| .|| ||
|_|_ Ξ ||###
⊂ ∪. || .|| ||
(_)__) Ξ.||###
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
敵! と男の顔を見た女は即座に感じました。三年の間、待ち焦れ、
/ノ人ヽ
恋ひ慕ひ三年の間、待ち焦れ、恋ひ慕ひあらゆる寂寞と閨怨とによつて
(,*,゜д゜#) 刺戟しつくした 揚句、今また息も詰るやうな歓喜の圧迫によつて
( ヽ) この自分を苦しめさいなまんとする、敵よ!
|~~~~ノ || ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
⊂ ∪. || .|| 退け。これが女の感じた本当の所でした。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 336 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:49 ID:J9fo0Ea2
/ノ人ヽ ∧_∧ _ノ
\ J(*゚ー゚)(・∀・ )
ノ
\
| UU < y ゝ ノ
\ /___□
/_∧_ヽ ノ
\ UU
(_)__) ノ
\ ノ
 ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄
ο
…… ||
…… .||###
/ノ人ヽ _∬___ ∬ ___
.|| ∧_∧ ||###
(,*,;д゜#) / 旦 旦 /||
|| (・ ∀・,;)||###
(( ( ヽ) / / ||
||( ヽV/ ⊃.|о__
|~~~~ノ || ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| .|| ||
|_|_ | ||###
⊂ ∪. || .|| ||
(_)__).||###
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
男は、さうした女の気持ちの反映を直ぐに直覚しました、と同時に三年前の
自分の記憶に残つて居た女とは似もつかぬ、やつれて老いた女の俤を一目見て、
あらゆる歓喜と期待の心が打ち破られました。自分の為め、自分を恋ひ慕ふの情に
さいなまれたその結果、斯うやつれ果てたといふ憐憫の意識は、直ぐその後に頭に
登つては来ましたが、いぢわるく一瞥の時の悪感につきまとはれてどうすることも
出来ませんでした。
- 337 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:50 ID:J9fo0Ea2
- 他に一分も心を寄せ合はなかつた相愛の男女が、三年目の再会後、
間もなく永遠の破綻を来らしめました。
ヽ,.ゞ:, ,ヾゞヾ;ゞゞ\ヾゞ: ヾヾ゛ ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ: ヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞ
,.ゞ :,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ ゛ゞ.ヾ ゞヾゞ;ゞゞヾ ゞ;ゞ
`
ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ ,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.: ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ ` ``
,,ゞ.ヾ\\ ゞヾ:ゞヾ ノノ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ
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ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ;
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ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: イ.ヾゞ, .,; ゞヾゞ___// ;ゞ ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ
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ゞヾ ゞ;ゞ iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/ ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾゞ;ゞ iiiiii;;;;::::: :|;:/ ヾ;ゞゞ;ゞ ヾゞ , `
ヾ;ゞゞヾ;ゞゞヽ|iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ ` //ノ人ヽ
ヾ ヽ |iiiii;;;;;::::: ::| ` ` ( ,*,) `
` ヽ|iiiiiiii;;;;;;::: :| ` ` (
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,...,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,. ,,,,.,.. ,, . ,,,..
,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,
- 338 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:51 ID:J9fo0Ea2
- この一例など至極不思議のやうでもあり、またつい平凡なやうにも考へられます。
恋といふものを尊重すべきものか通常視すべきものか私にも分らなくなりました。
始めの書き出しにはロマンチツクなしかも現実に即した人生行路の処々に置かれてある、
眼に見ましく手にとらまほしき一篇の詩のやうには書き出しはしましたが…………。
∧_∧
/Xハ)゛∂
(`∀´*)ハJ
(⊃φ|:|~~ )
┳┯┯┯┯┯┳
┃│││││┃
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 339 名前:にょ
投稿日:01/10/02 04:51 ID:J9fo0Ea2
- ____________
|| ||
|| 岡本かの子
|| 随筆「恋愛といふもの」 ∩_∩
|| 要約 \ (・◇・)
||_________ ⊂...V..i,>
┗┛ / | |
 ̄ ̄
_________∧____________
彼女は日本が生んだ天才、岡本太郎画伯の母上で
いらつしやいます。彼女の服の趣味は極めて華美で派手、
當時の日本では常識をあまりわきまへないものでした。
現代でいふところのピンクハウス的なファッションを彼女は
好みました。また容姿は決して端麗とはいへず、執筆時の
AAは、このやうな顏にしてみました。